熱戦

テーマ:農民/くま語録

昨日から満を持して、綾部市議会選挙の街宣車が走り始めた。投票日の8月29日まで、1週間、騒々しい日が続く。
平年は、高校球児たちが繰り広げる熱戦の数々を清々しく見届けて、いよいよ収穫の秋を前に、涼風そよぎ始めることよろしく、夏から秋、気持ちのスイッチを切り替え、来る大仕事の準備に着々と取り掛かるところ…。
しかし、今年は4年に1度の当たり年、おまけに記録的な猛暑。ここへ来て、甲子園の躍動や感動とは大きく異なる「あつさ」のおかげ、心穏やかな秋へと向うことができない。
猛暑、酷暑のおかげで、田んぼが乾くこと乾くこと。朝5時には田んぼに水を仕掛けてまわり、いったん家に戻り、朝飯を食らって一息つく間も無く、7時までには田んぼに出る。そう、午前10時までが野良仕事のゴールデンタイム。
先日まで続いた草刈りキャラバンもゴールを向え、今では田の草取りキャラバン隊。田んぼに入り、稲より背が高くなった草めがけて稲を掻き分け前進。鎌のあしらいよろしく、なるべく低いところからスパッと刈ってまた前進。
朝露に濡れる稲を掻き分け下半身はびしょ濡れ。汗で上半身がびしょ濡れになる午前8半には、選挙街宣車が行き交い始め、誠に騒々しい。
「ご苦労様です。お暑い中、農作業ご苦労様です。」
どうもこちらに向ってマイクでメッセージを送っているよう…。汗みどろの顔を上げて、愛想振りまくお調子者にもなれないし、
「はーい、苦労してまーす。暑さでゲロ吐きそーでーす。」
と大声を張り上げる。誰にも聞こえはしないたまの大声…、それもまた良し。

小さな峠の向こう側へ、早朝から水を入れている田んぼの様子を見に行こうと、こちらが峠に差しかかる前から、向こうのふもとから、
「ありがとうございます。お暑い中、暖かいご声援、誠にありがとうございます。」
と聞こえてくる。こちらが上りに差し掛かる頃、街宣車が下ってきて、車中の皆さん満面の笑顔で精一杯、車から身を乗り出しながら手を振り、先の文句をリピートしながら去っていく。こちらは、そのまま峠を上り、下り、そして下りきっても、誰とも会わない、誰もいやしない。
「おいおい、奴さんたち…、鹿かイノシシにも、ありがとうって手を振っとんたん?」

したたる汗を拭いもせず、暑さで口も閉まらぬままの田んぼの回りをそろそろ巡り、
「水は入ったか?ああ、まだか。仕方ない…、ふうー。」
と、田んぼに向ってひと息ついていると、また街宣車。200メートル、いや300メートル向こうから、
「ご苦労様です。猛暑の中、農作業ご苦労様です。」
とこれまた同じ文句でやってくる。ぐるり見渡せば、俺一人…。
「せからしかー!ズボン下ろしとろーが、わからんとかー!立小便にご苦労さんって、馬鹿にしとーとかー!」
ピンポイント攻撃したつもりやろが、間違いなく、俺の一票はよそに行く。

プロフィール

くま語録

くま

京都北部・綾部市物部地区で米を育てつつ、「農樹」を育てる農民。通称:くま
中津隈俊久(なかつくま としひさ)
’64年生、福岡県北九州市出身。
自作自演プロジェクト「農民パラダイス計画」のリーダー。

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