格好いい

テーマ:農民/くま語録

そろそろ稲刈りが近づいてきたことを知らせてくれる独特の香り。農家にはわかる、漂う香りの変化。盆が明ければ、戦闘準備。ライスセンター内の機器の掃除 に始まり、試運転に調整、場合によっては部品の交換。コンバインのチェックに注油などなどこなしながら、稲刈りモードへ切り替えを…。

さて、先日、ここ綾部市の地域担い手農業者で構成される団体の研修会・懇親会に、息子と二人で出席した。約10年以上前から、この団体と疎遠になっていた 理由が、私にはそれなりにある。しかし、親父が毛嫌いしてきたものから息子を遠ざけるのではなく、業界内外、ひと通りのところへ面通しをして、その後のこ とは本人が考え、交友を深めて行けば良いと思うので、農作業は早めに切り上げ、のこのこと…。
処は綾部市内のとある割烹旅館、いつものところ。こじんまりした座敷に通されれば、予想通りの雰囲気。世話役の農家2名が30代。同じく世話役の市職員 40代。農林部長と市長が50代。その他ご出席の農家は、みたところ、私と息子を除いて約20名が70代。想像通り、性懲りも無くやってきましたこの集ま り。
「ほれほれ、来たぞ、来たぞ。」
と、ばかり…、お決まりの自己紹介と近況報告。
そして、やれ、「経営が苦しい」、「後継者がいない」、「補助金が欲しい」、「国へ働きかけを…」、「市からの助成を…」などなどと、まさに陳情集会。こ れだから、私はこの人々から遠ざかり、孤高の人を気取って、本日この日まで来たたわけだ。とっとと、酒でも出せやぁと叫びたくなりながら、こういう集会で 避けようのない、今更ながらの自己紹介。
「ここに生まれたわけでも、育ったわけでもなく、農業に志を抱き、ゼロからスタート、17年目の稲作農家・なかつくまです。毎年収穫したお米は、大事に抱 えこんで1年かけて自家販売。秋、冬はネクタイ締めて営業活動することの繰り返し。米を抱えこむのは、しんどいっすわ。営業の旅費も経費もかかります。し かし、芽が出たら嬉しいもんです…。取引先の広がりもさることながら、この春には、我が家に別の芽が吹きました…。今日は私とともに、この道を歩む決心を した息子を連れて参りました。近々『農樹』を法人格にした暁には、社長に就任する男であります。農樹の初代社長の一樹です。どうぞ、よろしく。」

あー、くまちゃん、爽快!

続く息子が、また爽快!威風堂々、
「息子の一樹です。医療系の大学に通い、トレーナーの道を志してはいましたが、農業の魅力と双方天秤にかけてみると、こちらを選択するに至りました。僕たちよりも下の世代の子たちが農業に憧れを持つように、僕が手本となる農家になりたいと思います。」
と、言ってのけましたがな…。かっけぇっ(現代若者言葉:格好良い)!と、47歳が心の内で叫んでしまう。それからが、大変。日本の宴会文化の洗礼を浴びる。即ち、注ぎつ注がれつ、ご返杯の嵐に巻き込まれ、ゲロまみれ。
「気持ちわりーっ。あのじじいどもめ。うぉー、ろろろっ。おえーっ、ろろろっ。」
翌朝、意外と爽やかな顔の息子は、
「あんだけ吐きまくったから、腹減った。それにしてもよぉ、やっぱ昨日のおっさんたち、どいつもこいつも気持ち悪かったよな。後継者がいねえー、のなん のって二十歳の俺に言ってきてよー。だいたい、メジャーリーグ、Jリーグに後継者不足なんてねーじゃんか!じじいどもが、ダッセェーから後継者不足なん じゃねーか。何年間生きてきて気付かねぇんだ、ばーか。」
「…、…、かっけぇっ。」

プロフィール

くま語録

くま

京都北部・綾部市物部地区で米を育てつつ、「農樹」を育てる農民。通称:くま
中津隈俊久(なかつくま としひさ)
’64年生、福岡県北九州市出身。
自作自演プロジェクト「農民パラダイス計画」のリーダー。

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