雨降りに、映画

テーマ:農民/くま語録

稲作シーズンが本格化しようとしているのに、雨ばかり。屋外作業は殆んど手付かずだが、種まきに向け、作業場のセッティングをこまごまとやっている。
ジェットヒーターを焚きながら、屋内作業をしながらの、息子との会話は充実していて、このうえなく楽しい。一昨日は、映画の話に花が咲いた。当年、19歳の息子の映画好きは、紛れも無く、この親父の影響を受けてのこと。
「くまさん…、」
息子から、そう呼ばれて19年。妻から、そう呼ばれて20年になる私に、
「DVD…、どうやった?」
と、彼が訊ねてきた。働き者の彼は、米作りの親父のもと、そしてパン作りの母のもとでバイトをしつつ、その一部を趣味にまわして、かつ、感動のお裾分けをもしてくれる孝行者。
4日前、彼から借りたのは、「ストレイト・ストーリー」という映画。実話に基づくその映画の主人公は、その名も、アルヴィン・ストレイトという73歳の老 人。その彼が、杖無くして歩けなくなった矢先、十年前、喧嘩別れをして以来、音信不通になってしまっていた彼の兄が、倒れたという知らせが入ったあたり が、映画の序盤。
そこで、車の免許もなく、足腰が不自由になって、バスにも乗れない頑固な主人公の彼、「ストレイト」が、起こした「ストーリー」が、小型のトラクターで、兄のもとへ向かうというものだった。
時速8キロでしか走れない、小型のトラクターで560キロを野宿をしながら走破する、6週間の旅。

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映画の冒頭、アイオワ州の満天の星空と、農村風景が映っていることに始まり、主人公・ストレイトが、兄のもとへ、自分の力だけで訪ねたい…と思う、「ストレイト」さ、頑固さと、道中の人々のかかわり合いを織り交ぜて、「ストーリー」が進む…。
私は、息子へ、「良かったよ。」と答え、ラストシーンと、冒頭の星空の映像のつながりを私ながら感じるところあり、思い出しつつ彼との会話を進めている と、もう、あっぷあっぷ。へその奥から、胃や心臓あたりへ染み渡って来て、涙流すか、叫ぶしかない感覚を隠して、あっち向いて、こっち向いて、上を向く。
「昔観た、高倉健さんの、幸せの黄色いハンカチを思い出したぁ…。」
何かで目がしみた素振りをしながら、
「それって、いいんか?」と、聞く息子に、
「いいにきまっとろうが、健さんぞ、健さん、俺の母校の先輩ぞ。観てみいーや。」
と、あっち向いて、上を見上げる。
It is the straight story.

プロフィール

くま語録

くま

京都北部・綾部市物部地区で米を育てつつ、「農樹」を育てる農民。通称:くま
中津隈俊久(なかつくま としひさ)
’64年生、福岡県北九州市出身。
自作自演プロジェクト「農民パラダイス計画」のリーダー。

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