ステップ

テーマ:農民/くま語録

育苗ハウスの準備ができあがった。すっきり清掃と整地が済んだところへ、ぬき板を立てていく、ここにビニールを被せて、水を張ると水深5センチのプールができる。
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同じ仕掛けを露地でも作るので、草を刈り、乾きを待つ。
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ここでの仕事は、暫し、おてんとさんに下駄を預けよう。
待つのも仕事のうちだ。

雨降りに、比叡山

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天候悪し、今日は26日。学生時代、お世話になったあの人の月命日。彼の眠る比叡山へ、おむすびぶら下げ、迫るこの稲作シーズンの決意表明に行って来た。 山頂は、吹雪。ダウンジャケットを着てきて正解。猫背になりつつ、「真っ直ぐ過ぎた人だった」と、あの人のことを思う。その真っ直ぐさが、命を縮めてし まったのだと。
そして、お堂を出るとき、母校の先生が、話していたことを思い出した。
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「私は、何事も真っ直ぐでなければ気に食わない。松の盆栽の枝振りが良いと言われるのを観ても、良いと思ったことが無い。松でも、山に真っ直ぐに立ってるやつがいい。」
土地柄だとは思うが、格好良さとは、自分を曲げずに貫くことだと信じて育った私。
しかし、世の中見渡して、真っ直ぐ過ぎると、得することが極めて少ないことを、遅ればせながら、ようやくわかってきたが、もう遅い。
後悔する理由(わけ)も見当たらなず、このままで、愚直な馬鹿さ加減のままの自分が、心地良い。
It is my straight story.
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帰りの車中、息子が録音していたボブディランの「風に吹かれて」と、福山雅治の「道標」を、独り、差し替え、繰り返し聴き…。「道標」は、俺より少し格好良い福山君と合唱しながら帰ってきた。

雨降りに、映画

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稲作シーズンが本格化しようとしているのに、雨ばかり。屋外作業は殆んど手付かずだが、種まきに向け、作業場のセッティングをこまごまとやっている。
ジェットヒーターを焚きながら、屋内作業をしながらの、息子との会話は充実していて、このうえなく楽しい。一昨日は、映画の話に花が咲いた。当年、19歳の息子の映画好きは、紛れも無く、この親父の影響を受けてのこと。
「くまさん…、」
息子から、そう呼ばれて19年。妻から、そう呼ばれて20年になる私に、
「DVD…、どうやった?」
と、彼が訊ねてきた。働き者の彼は、米作りの親父のもと、そしてパン作りの母のもとでバイトをしつつ、その一部を趣味にまわして、かつ、感動のお裾分けをもしてくれる孝行者。
4日前、彼から借りたのは、「ストレイト・ストーリー」という映画。実話に基づくその映画の主人公は、その名も、アルヴィン・ストレイトという73歳の老 人。その彼が、杖無くして歩けなくなった矢先、十年前、喧嘩別れをして以来、音信不通になってしまっていた彼の兄が、倒れたという知らせが入ったあたり が、映画の序盤。
そこで、車の免許もなく、足腰が不自由になって、バスにも乗れない頑固な主人公の彼、「ストレイト」が、起こした「ストーリー」が、小型のトラクターで、兄のもとへ向かうというものだった。
時速8キロでしか走れない、小型のトラクターで560キロを野宿をしながら走破する、6週間の旅。

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映画の冒頭、アイオワ州の満天の星空と、農村風景が映っていることに始まり、主人公・ストレイトが、兄のもとへ、自分の力だけで訪ねたい…と思う、「ストレイト」さ、頑固さと、道中の人々のかかわり合いを織り交ぜて、「ストーリー」が進む…。
私は、息子へ、「良かったよ。」と答え、ラストシーンと、冒頭の星空の映像のつながりを私ながら感じるところあり、思い出しつつ彼との会話を進めている と、もう、あっぷあっぷ。へその奥から、胃や心臓あたりへ染み渡って来て、涙流すか、叫ぶしかない感覚を隠して、あっち向いて、こっち向いて、上を向く。
「昔観た、高倉健さんの、幸せの黄色いハンカチを思い出したぁ…。」
何かで目がしみた素振りをしながら、
「それって、いいんか?」と、聞く息子に、
「いいにきまっとろうが、健さんぞ、健さん、俺の母校の先輩ぞ。観てみいーや。」
と、あっち向いて、上を見上げる。
It is the straight story.

農家の春

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稲作農家に春が来た。野良仕事の手始めは、苗を育てるビニールハウスの中の、清掃と、整地。バックホーで草を削り、土をならす。ポンコツ機械のアームからオイル漏れを発見し、またもや修理代のことが頭を過ぎる。

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大学へ自宅から通学する息子が、昨年から良きパートナー。休憩時間の会話は、さわやかで濃い内容になってきた。

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向こうに豆粒のように固まっているのは、平均年齢80歳の三人組、近所のおっさんたちが、缶コーヒーを手土産に、若手の働きぶりを見学しながら、日向ぼっこ。

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仕事の邪魔にならぬよう、ハウスの隅っこで約3時間、たっぷり語らって、こちらに「はよ、しもてぇ」と、手を振り去っていく。無理せず、もうそろそろ、仕事終わりにしなよっ、てさ。その存在がのどかなおっさん。
次は、ハウスの外の、露地育苗の床作りに取り掛かろう。

ホームページ開設

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ホームページ製作にとりかかって一年以上、やぁれやれ、随分な時間を費やしてしまった。
それもそのはず…。当初、製作にかかわってくれていた近所の友人と、打ち合わせと称して、我が事務所で出会えば、ついつい酒盛りに移行するのが常となり、一向に進展しなかった、というのが本当のところ。
その辺りの事情知りたる、OA機器の面でお世話になっていた㈲コークスさんから、「そろそろ、うちで作りましょうか?」と、声かけされたおかげで、完成に漕ぎ着けたものの、あのままでいたなら、開設はいつのことになっただろうか。
そもそも、私はウェブだ、ブログだという柄ではない。さらにまた、その体裁だ、デザイン、構築どうのこうのと、いじるセンスも無ければ、勉強する気も、全 然無い。そこいらは、人任せにしておいて、せっせと野良仕事。せめてパソコン嫌いな人間が、仕方なくディスプレイに向かう僅かな時間や、持てる少ない能力 は、世間に語りかける言葉を捜したり、それを作るために使いたい。
そんな私が、ホームページを開設しようと思い立ったのは、よそからここへやって来て15年、農業始めて15年、馬鹿と言われて15年…、
「歩んだ記録をまとめておけば、確固たるものでは無くても、農業や農村を考えてみようとする人への道標になれるはず。そして、ささやかながら、それを運営 していくうえで、語り合いが生まれて往けば、廃れて行く農業や農村に、善い意味合いでの、バタフライ効果をもたらすこと…、だって、あるかもしれない。」
と、いうのがその理由。
さて、ここに掲げる「農業梁山泊」は、過の友人と二人、いつも盃片手に語り合ううち、彼が私の気持ちを汲み取って、生んでくれた言葉だ。快心のこの響き は、アウトローの集まるところの、梁山泊でもなく、賢人の集まるところの、梁山泊でもなく、集い語らうことで生まれるエネルギーが、充満しているように思 え、彼へ拍手喝采、伊達に飲んだくれ、無駄に時間を費やしているわけでは無いことの証明だ。
その「農業梁山泊」…、この先、何者達の巣窟となって行くのか?飲兵衛が集まる口実にばかり、この言葉を使うのは避けたいな。

プロフィール

くま語録

くま

京都北部・綾部市物部地区で米を育てつつ、「農樹」を育てる農民。通称:くま
中津隈俊久(なかつくま としひさ)
’64年生、福岡県北九州市出身。
自作自演プロジェクト「農民パラダイス計画」のリーダー。

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