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農業生産法人 株式会社 農樹

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のんびりいこう

昨日、種まきを開始。1回目なので少量にとどめ、今日はその発芽を待つ。来週2回目の種まきをするための種は、水槽の中で催芽中。この先、1,000枚単 位で種をまき、合計4,000枚の苗を作っていく。使用する土や種籾をひとところに集めてみると、大したボリュームだ。近頃、それを前にしても平気で居ら れるようになったが、数年前までは、この時期、浮き足立っていた自分がいた。
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ずらりと並んだ土

4年前の4月1日。作業場の屋根裏へ、資材の確認をするために梯子をかけて上ったところ、上りきったあたりで梯子がするする滑り出し、そのまま転落。右足のくるぶしを骨折した。ほんの一瞬、気がすっ飛んでいたのだろう。
すぐに手術を受けるには段取りがつかず、その2週間後、手術を受けて翌日退院の強行日程で帰ると、休まず作業。装具を右足にまといながら、その春を乗り切った。
あの大ピンチを乗り越えたから、今があるのだとも思いたい。ゆったり構えて、淡々と仕事をこなす。雨続きで、田んぼには出て行けない。晴れ間がやって来るのを待つのも仕事のうちさ、とね。

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相棒たちも待機中。

ステップ2

種籾の消毒。60℃のお湯につけての温湯消毒。農薬不要。
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このあと数日水に浸けて、後、催芽。
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ただ今、120キロ漬け込んだところ。

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まだまだ、これは序の口。
徐々にエンジンかかってきたぞ。

ステップ

育苗ハウスの準備ができあがった。すっきり清掃と整地が済んだところへ、ぬき板を立てていく、ここにビニールを被せて、水を張ると水深5センチのプールができる。
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同じ仕掛けを露地でも作るので、草を刈り、乾きを待つ。
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ここでの仕事は、暫し、おてんとさんに下駄を預けよう。
待つのも仕事のうちだ。

雨降りに、比叡山

天候悪し、今日は26日。学生時代、お世話になったあの人の月命日。彼の眠る比叡山へ、おむすびぶら下げ、迫るこの稲作シーズンの決意表明に行って来た。 山頂は、吹雪。ダウンジャケットを着てきて正解。猫背になりつつ、「真っ直ぐ過ぎた人だった」と、あの人のことを思う。その真っ直ぐさが、命を縮めてし まったのだと。
そして、お堂を出るとき、母校の先生が、話していたことを思い出した。
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「私は、何事も真っ直ぐでなければ気に食わない。松の盆栽の枝振りが良いと言われるのを観ても、良いと思ったことが無い。松でも、山に真っ直ぐに立ってるやつがいい。」
土地柄だとは思うが、格好良さとは、自分を曲げずに貫くことだと信じて育った私。
しかし、世の中見渡して、真っ直ぐ過ぎると、得することが極めて少ないことを、遅ればせながら、ようやくわかってきたが、もう遅い。
後悔する理由(わけ)も見当たらなず、このままで、愚直な馬鹿さ加減のままの自分が、心地良い。
It is my straight story.
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帰りの車中、息子が録音していたボブディランの「風に吹かれて」と、福山雅治の「道標」を、独り、差し替え、繰り返し聴き…。「道標」は、俺より少し格好良い福山君と合唱しながら帰ってきた。

雨降りに、映画

稲作シーズンが本格化しようとしているのに、雨ばかり。屋外作業は殆んど手付かずだが、種まきに向け、作業場のセッティングをこまごまとやっている。
ジェットヒーターを焚きながら、屋内作業をしながらの、息子との会話は充実していて、このうえなく楽しい。一昨日は、映画の話に花が咲いた。当年、19歳の息子の映画好きは、紛れも無く、この親父の影響を受けてのこと。
「くまさん…、」
息子から、そう呼ばれて19年。妻から、そう呼ばれて20年になる私に、
「DVD…、どうやった?」
と、彼が訊ねてきた。働き者の彼は、米作りの親父のもと、そしてパン作りの母のもとでバイトをしつつ、その一部を趣味にまわして、かつ、感動のお裾分けをもしてくれる孝行者。
4日前、彼から借りたのは、「ストレイト・ストーリー」という映画。実話に基づくその映画の主人公は、その名も、アルヴィン・ストレイトという73歳の老 人。その彼が、杖無くして歩けなくなった矢先、十年前、喧嘩別れをして以来、音信不通になってしまっていた彼の兄が、倒れたという知らせが入ったあたり が、映画の序盤。
そこで、車の免許もなく、足腰が不自由になって、バスにも乗れない頑固な主人公の彼、「ストレイト」が、起こした「ストーリー」が、小型のトラクターで、兄のもとへ向かうというものだった。
時速8キロでしか走れない、小型のトラクターで560キロを野宿をしながら走破する、6週間の旅。

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映画の冒頭、アイオワ州の満天の星空と、農村風景が映っていることに始まり、主人公・ストレイトが、兄のもとへ、自分の力だけで訪ねたい…と思う、「ストレイト」さ、頑固さと、道中の人々のかかわり合いを織り交ぜて、「ストーリー」が進む…。
私は、息子へ、「良かったよ。」と答え、ラストシーンと、冒頭の星空の映像のつながりを私ながら感じるところあり、思い出しつつ彼との会話を進めている と、もう、あっぷあっぷ。へその奥から、胃や心臓あたりへ染み渡って来て、涙流すか、叫ぶしかない感覚を隠して、あっち向いて、こっち向いて、上を向く。
「昔観た、高倉健さんの、幸せの黄色いハンカチを思い出したぁ…。」
何かで目がしみた素振りをしながら、
「それって、いいんか?」と、聞く息子に、
「いいにきまっとろうが、健さんぞ、健さん、俺の母校の先輩ぞ。観てみいーや。」
と、あっち向いて、上を見上げる。
It is the straight story.